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【短編『鮮血への一撃』 9 Kiss】 (リ……ド……) やわらかな薔薇のコロンの芳香と、初めて触れた頬の感触。おれのなかのどこかが、かすかに揺らぎだす。 「やだ、くすぐったいよ、クラウド」 「…………」 「うふふ。オトナの生きかた、か。そうだね。ウソ偽りは世渡りをラクにする。狭いスクールライフのさなかですらも、それは実感してる」 「……キスで宿題とテストをこなしてるって話か」 「ハグもだよ。もっと触れあうこともある」 リミッドは頬にあてがわれたおれの手を取り、その指先を自らの口唇に這わせた。 「かれらは僕のナカをグチュグチュに掻き回して、僕のいちばん感じるところをくすぐるの。さらに乱れた僕の、さらに奥までをも掻き回したい、って……」 ゴクリ、と、間違いなくおれは唾を呑んだ。こうも刺激的なセリフが並べば当然の反応だ。言ってるやつが立派な色香を漂わせてるなら尚更だ。 「奥の奥まで掻き回されたのかよ。適当な野郎に」 「ううん。まだ。てゆーか、みんなヘタッピなんだもん。指でもイカせられないテクニックじゃあ到底ペニスでイカせれるわけない……」 咄嗟におれは、彼のヨタ話を口唇ごと塞いだ。猥談への嫌悪と。この『赤』の味を占めた奴等への嫉妬とが入り混じり。統べる場を失い、 「んんっ……、クラウ……」 この『赤』の蠱惑を喰らう。とりあえずおれに閃けた打開策はそれだけだった。ほかの洒落た手段などなかった。なにしろ餓鬼だったからな。 「うぅ……ん……。クラウド…………」 「…………。」 1分もカマさないガッツいたキスなのに、ひたすら長く思えたし。ドッと疲弊感も襲った。おれは微かに顔を離し、赤い悪魔の惚けた顔をまじまじと見つめる。いいやーー (やばい) おれは顏を逸らし、自身のこめかみをガツリと打った。 リミッドは軽く悲鳴を上げる。 「く、クラウド!? どうしたの!?」 無視を決め込み、おれは更に二、三度、こめかみを穿つ。誘惑に流された己の情けなさを恥じた一撃だ。それと、きっと今のおれの頬も赤い。それをこの『赤』に見られたくない。熱よ、さっさと飛んでくれ。そう願いながらおれは左手を握りしめ、振り上げる。 「ねえ、やめなよクラウド! そんなにポカポカやったらキミがバカになっちゃう!」 左手首を掴まれた。強く振り払う。 「気安く触るな!」 「うっ。ご、ごめんなさい……、ていうかヒドい。キミこそ、さっき僕に気安く……気安すぎるキスを……」 「キスキスうるせえ! 女々しい!! 黙ってろ!!」 「ううっ。……うん。ご、ごめんなさい……」 萎縮する身を横目にし、おれは舌を打つ。ああ、確かに酷い。我ながら勝手極まる言い分だぜ。完全にイジメっ子じゃねえか、おれ。 「クラウド……ご機嫌、直して?……」 対する『赤』は肩を竦めたまま、おれの様子を窺っている。完全に下の立場だ。 (……『素』で。素でコイツは、おれより下の立場を選んでるんだ。なぜ? なぜも何もねえ。コイツは、おれを、……) 『おれを好いているからだ』というアンサーに着いた瞬間。おれは赤い彼の所作の全てに感じいった。『可愛い』、とーー (リド。おまえ、……すげぇ可愛い……) 確実にそう思った。リミッド、おまえ、本当におれが好きで好きで仕方ねえんだな。だからおれが滅茶苦茶な理屈を放てど怒鳴れど、おまえは堪えてる。そう理解したら、おれはおまえが可愛いと思った。果たしてコレが『恋』なのかどうかはまだ判定できねえが。 「クラウド?……ご機嫌……」 「直ったよ。おれこそ悪かったな」 「え? う、ううん、謝ることキミはしてないよ? なんにもしてない!」 慌てふためき弁護する姿。『可愛い』と、またおれは思った。 「リド」 「う、うん」 「さっき、超至近距離でおまえを見て……抱いた思いがある」 「えっ。な、なに?」 「……色白だが、全体的にはオリエンタルな顔なんだな、おまえ。おれは日系だとマザーは諭してくれるが、リド。おまえにもアジアの血が多少は混じってんのかもな」 「……? う……、うん……。そうなのかもね。……」 リミッドは惑いの表情だ。そして見開いた目を逸らせずにいる。おれの真意を掴みきれぬゆえに、照準をズラせねえのか。 (買い被るなよ、リド) おれ、ホントはすげぇドキドキしてるんだよ。おまえが可愛いことを初めて自覚した。けど、いざ紡ごうとすると気の利かねえセリフになってしまうんだ。 「あの……、クラウド」 頬を染めるリミッドの下唇は小刻みに震えている。相当の動揺が見てとれる。多数の男女との不純交際関係が著しいとウワサの割に。ああ、やっぱり可愛いなぁ、おまえ。と、おれは納得する。 「あの。クラウド。キミ、僕……、僕をこんなに間近に見たの初めてでしょ?」 精一杯と思われる問いかけだ。おれは無機質な抑揚で応える。 「ああ。初めてだ。でも、おまえもだろ」 「ううん。会堂でお昼寝してたキミをジーッと観察したことがある」 「マジかよ。気色わるッ」 「あと。ちらほらと煌めくキミの青い目。すんごくキレイだなぁって……いま、あらためて思った」 「ああそうかい。thank you」 己の美醜へのコダワリは無い性質(タチ)だがマザーが褒めてくれる銀髪と碧眼は一応の自慢だ。なのでサラリと礼を流した。 「…………、あの。ちょっと。そうじゃなくてさあ、クラウド……」 「あん? どうした。歯切れの悪い」 「あの。僕。キミの目を褒めた」 「ああ?」 意味を解せないおれの視界にリミッドの懇願するような顔が映り続ける。 「リアリー」 唐突に思いついた。こいつの顔は、あれだ。ティーチャの書庫の図鑑にあったツラだ。 「アメショ」 「え?」 「アメショだよ。アメリカンショートヘア。猫。でーっかい翠の目玉なんだ。おまえ、ソックリ」 「………………!!!!」 リミッドの瞼はイッパイに開いた。翠の眼球は光彩を放つ。ああほら。やっぱCatだ。 (猫って可愛いしな。なかなか気の効いた比喩だぜ) ところが 「なあに!? それ!! 信じらんない!! 信じらんないッ!!!」 頬を最高潮に真っ赤にし、リミッドはカン高く怒鳴り散らした。あれ? (おかしいな。良い喩えだと思ったのに) まぁいいか。怒るカオも可愛いし。と、おれはキィキィ喚く『赤』を眺めながら呟いた。 《続く》 ――――― いっきにバカップル展開となりました(笑)。 BL的キスシーンがありましたが、まあ、挿し絵で描いたわけでもないので注意書きナシとしましたw …にしても 蔵人って早熟だなぁ(笑)… コレでまだ小学生なのかと思うとw… 23:01:43 コメント(0) [コメントを書く] 重要なお知らせ@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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