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【短編『鮮血への一撃』8 キミの“心臓”】 「クラウド。キミ、心臓に持病があるの? 知らなかった。いま怒ったから痛くなったんだね。本当に、ごめんなさい」 「…………、………………」 紡ぐ言葉を失っちまう。こいつの発言のすべてが異国語にしか聞こえない。理解できねえ……! 「ち……ちがう。違う、リミッド、なに額面どおりに受け取ってんだ。おれの言った『heart』は物理的な心臓のことじゃない、ココロだ。スピリットだ」 「スピリット? やあだ、迷信。たましいや精霊とかいうやつ? 僕は目に見えないものは信じない」 「い……いや、この場合は『思考』のことだ」 「思考? ああ、リアリー。ブレイン(脳)ね。んもう、最初からそう言ってよお、クラウドのイジワル」 「…………。」 素で抜かしてんのは解る。わかるから余計におれは混乱した。おい。ここまで順序立てて説明しねえと納得しないって? つうか『脳』かよ。まあ確かに医学的検知とやらならそう言うだろうがよ! 「あっ、そうだ。ママにも謝らなくちゃ。僕はひいひいおばあちゃんの墓を足蹴にしてしまった」 「ええっ!?」 混乱をきたしだした脳にさらなる打撃が穿たれる。なぜそういう結論に至るんだ!? 「NOだリド!『どうして?』と返されたら、おまえは今まで抱いてきた無神論を明かすことになる。それは両親を真から哀しませてしまう!」 「だけど言ってしまわなくちゃ。来週の日曜、僕はもう賛美を唱えないって」 「リド!」 「僕はイエスなんか大キライだったんだ、って。言うよ。言えば優しいダディが初めて僕を殴るかもしれないけど……」 ここで一端を切り、 「いいよ。僕が傷めばキミは、これからも僕と会ってくれるんでしょ? クラウド」 また、おだやかな声色で紡いだ。 おれは穏やかどころじゃねえ。なんなんだ、おまえはいったい何者なんだ、思考ループに陥りかけていた。 (リド……、リミッド……!) リミッドの俯く横顔は、かかる髪で表情が不明瞭だ。おれの焦燥は増す。さらに傍らに寄った。『赤』よ。せめて表情くらい見せてくれ。おれは彼の肩に手を置き、おれに向かい合わせた。 「あっ……、クラウド……」 「…………」 「なあに、どうしたの。ほっぺの痛みに僕がガマンできず泣いてると思ったの?」 「………………。」 「だいじょうぶさ。僕は立派に別れてみせるよ。イエスとも、肉親とも」 「リミッドっ……」 おれは込み上がる情動に震えた。これはおれにとっての、初めての離別と審判の瞬間でもあるのだ。 (審判しちまったんだ、おれは。おれのひとことが、いま、ひとりの人間の道筋と家族の絆とを決定づけようとしてる) 神を失ったままの路へ行ったなら、進み続けたなら、こいつは。 (どうなってしまう?) おれは放った。リド、馬鹿なマネはよせ、安心しろ、おれはおまえの友達だ、ずっと一緒にいる、歌を唄おう、だから親には言っちゃいけない、『イエスが大嫌い』などと言ってはだめだ。 (どうしたらいい? どう伝えればいい!!) リミッドの未来を案じる思いもあった、けれどなによりもおれはおれが誰かを裁く審判になっちまうのが怖かったんだ。とんだチキン(弱虫)だよな。まあ、ガキだったからな。 「いいよ。すべて打ち明けるよ」 「だめだだめだだめだ!! ファミリーを悲しませるな!!」 「うーん。だけどさ、クラウド……」 「いいから! 本心はしまっとけ! 墓場まで!!」 「ううーーん……」 いぶかしみつつ、リミッドは頷いた。 「オーケー、クラウド。わかった。キミがそんなに言うのなら。神さまを詰る本音はママにも周りにも隠す。あちこち蹴ったり打ったりも、なるべく我慢するね」 「えっ、……あ、あぁ。そうだ。それがオトナの生きかた、ってやつなんだよ、リド」 なんで14歳に11歳が人生指南してんだか。とセルフツッコミを入れつつ、おれは安堵した。そして左手をリドの頬に滑らせる。このとき気づいた。すでに身長ではおれは彼を抜いていた。 (リ……ド……) やわらかに香る薔薇のコロンの芳香と、初めて触れた頬の感触。おれのなかのどこかが、かすかに揺らぎだす。 《続く》 ――――― リドの『異端』。ざっくり言うと何?って、……難しいすねw 躁鬱、サイコパス、加虐被逆性愛、ヘマトフィリア、アスフィクシオフィリア、殺人性愛… いろんな精神病疾患がザザザと混ざってるんですけど。しかして若い蔵人少年は気づけないという・・・ 23:57:41 コメント(0) [コメントを書く] 重要なお知らせ@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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