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【短編『鮮血への一撃』7 ほほえむ精神病質】 「ごめんなさい。クラウド」 (えっ……) 構えた全身が強張った。なにをも聴き逃すものかと、おれは足を踏み出した。 「ごめんなさい、クラウド……謝るから、おねがい。怒らないで」 一片の澱みのない、穏やかな微笑みを彼は向けた。 (うッ……!?) おれは異質な何かを感じとったのか、掻痒に囚われて腕を掻く。掻きながら彼の一足手前にまで寄った。 「……おい、バカ。おれに謝る必要はない。てめえが謝罪するべきは、イエスと、父なる神と、てめえの先祖……」 「どうしてキミが怒ったのかが全然わからないけど、とにかくごめんなさい」 「……、ああ!?」 思わずおれは素っ頓狂な声を出しちまう。そうか、これだ。これが違和感の要因だ。こいつは欠片もおれの論を解していない。なのに上辺だけ謝ってやがる、それをおれの勘が察知したんだ。 「ふざけるな! リミッド!!」 「うわっ、やだ、怖い。ご、ごめんなさ……」 「誠意のねえ詫びなど受けたくもねえ!!」 「意思はあるよ? 僕、キミとは仲良くしたいの。だから意味不(いみふ)だけど謝るの」 また微笑んでくる。 おれの苛立ちは臨界を超えた。 「なにがおかしいんだ! サタン野郎!!」 左手が彼の頬を。切るように薙いだ。 「やッ……!!」 (うっ、しまった、つい手がっ!) 「ん……う……、クラウ……ド」 ぐらり。よろめく肢体を、かろうじて留める『赤』。 「……うっふ……。だめだよ、クラウド。ほっぺは目立ち過ぎる。殴るなら周りにバレないようにやらなきゃ」 ぐらり。おれの体も揺らいだ。こいつの妄言に、揺らいだ。 「な、なにを言ってんだ、おまえ。返すセリフはそうじゃねえだろ! 泣くとか、反撃とか……」 「泣く? 反撃? あッはぁ、しないよ。ここは黙って制裁を受ける。そうすればキミは怒りを収めてくれる。だろ?」 そうじゃねえ、そうじゃねえよ馬鹿! と、みたび怒鳴りかけたがおれは息を吸う。精一杯に気を鎮め、次の論を紡いだ。 「リミッド。なあ、おまえ。おれの説教の数々がマジで理解できねえのかよ?」 不可思議極まる。リミッド。おまえ、学習能力や生活能力、読解力が皆無なのか? いいや、こいつが行きがけで読んでたのはダンテだぜ。むしろ知能は高レベルだ。 「どうなってんだ。なあ、赤いおまえ。おれの叱責の意味が、おれの心の傷みがまったくわからねえだなんて」 「……? 意味? いたみ?」 不思議そうな表情で小首を傾げるリミッド。 おれは貯めた知識を総動員して考える。リミッド、おまえは『なにもの』なんだ。ナチュラルに残酷を振りまく、まるでサタンだとおれは断じた。けれども (おれの憤りを静めたくてコイツは謝罪してる。こんなに突っぱねてる相手に赦しを請うている。……違う。サタンじゃねえ。こいつの思考はサタンのそれじゃねえ。ならば、……ならば……) 「ていうか、大丈夫? クラウド」 「え?」 「胸だよ。痛いんでしょ?」 両手を己の左胸にあてがうと、リミッドは眉を寄せておれを見つめきた。 「キミ、心臓に持病があるの? 知らなかった。いま怒ったから痛くなったんだね。本当に、ごめんなさい」 「…………、………………」 紡ぐ言葉を失っちまう。こいつの発言のすべてが異国語にしか聞こえない。理解できねえ……! 《続く》 ―――――― 間をおきました、すみません(^^;) 前回まで書いて『ううむ。もうちょっと加筆しようかな?』となっちゃいまして… リドの言動に漂う『異質』。この異質の正体、かれの精神の奥に潜む『なにか』に、まだ幼い蔵人少年は気づけないわけですが…… 次ページは更に『???』的な展開です。微妙にお楽しみに!w 23:27:02 コメント(0) [コメントを書く] 重要なお知らせ@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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