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【短編『鮮血への一撃』6 逆鱗】 「キミがなににイラついてるのかサッパリわかんないよクラウド」 「…………ッ」 おれは歯根をギリリと軋らせた。この、悪気の欠片もなく悪意を漏らすサタンの申し子に。はたして何を論ずればいいのか、ひらめけず。だが、 (闘わなければならない。『赤』。てめえのなかに巣食うサタンと。) 目を逸らしてはならない。ここでこいつを諌めなければならない。強靭な意志、天の魂がおれにその使命を告げている。だからおれは唇を開いた。いま述べられるだけの論を、精一杯に並べたてる。 「リミッド・バトラー」 「なあに、よそよそしく。リド、って呼んでよ。リミィでもいいけど」 「リミッド・バトラー。霊園は、おれたちの父なる神に殉じた大切なファミリーの眠る場所だろう。いいや、たとえノンクリスチャンの住処でも。無下にしていい道理がどこにある!」 マザーは『日本は“サムライ”の国。かれらはスワード(刀)に宿る神とブッダを貴ぶ』とおれに説いた。 リアリー。世界にはきっと、言語の数だけ神の概念もあるのだ。むろん世界の神はイエスとイエスの父神しかありやしないが、さまざまに伝えきかれる神もまた神なのだ、それを信ずる人々にとっての。 「死者が眠る地と、かれらや生者が愛している神を否定する行為。それは何よりも深いアイデンティティを踏み躙る愚行だ。どうしてそんな酷いことをおまえは平然と侵すことが出来るんだ、リド!!」 「…………。まくしたてないでよ。僕、お説教って地味な花より嫌い……」 「怒りたかねえよ! 疲れる! てめえに論じたって1セントの得にもなりゃしねえ! 叱られたくねぇ!? ならもう二度とエクレシアに来るな!! したり顔で賛美歌を歌うな!! なにがメリークリスマスだハッピーバースデーだ!! 神の信徒であるおれを馬鹿にしたくて持ち込んだギターも! デスクも! いますぐ突き返すから消えろ!! おれの前から消えやがれ! リミッド・バトラー!!!」 まくしたてるなと制されたせいか、却っておれは煽られた。日常、こんなに喋るなんざまず無いぜ、そこまでの息巻きだった。これは諌めるというより、完全な恫喝だ。まぁおれもガキだったから無理もねえが。 「クラウド……」 「……………」 重い、張りつめた緊張感が辺りを支配する。そうだな。いわば絶縁状を叩きつけた格好。スクールで友人が多いというコイツにとっては衝撃だったろう、ここまでの拒絶は。だがそれがどうした? なぁ、赤い悪魔。てめえはてめえを世界でいちばん愛してんだろう。ならば、おれのような天涯孤独の餓鬼一匹を見限るぐらい墓石を蹴るより易い業だ。 「おれの話は仕舞いだ。さぁ墓場に戻れよ、リミッド・バトラー。一緒の親が心配してしまう。おれは敬虔なクリスチャンであるおまえの親は尊敬してるんだ」 「…………。うん。ママとダディが哀しむのは僕も哀しいし、戻る……」 そりゃ哀しいだろうよ。かれらはおまえを愛してくれる存在なんだものな? そこが前提でなければおまえは誰をも慈しみやしない。 (まるで餓鬼だよ。赤ン坊だ) 草を食む靴底の擦れる音が遠のく。気配の失せた頃合いでおれは振り返った。 「ん?」 去ったと思った『赤』は、まだ留まっていた。半身をおれに向け、やがて顔もゆるやかに向かい。 「僕だけ帰るのはおかしい。キミも行こう」 なんて的はずれな発言だ。しかも微笑んでいやがる。おれは当然、憤る。再び怒鳴り散らさんと構える。 「ごめんなさい。クラウド」 (えっ……?) 構えた全身が強張った。なにをも聴き逃すものかと、おれは足を踏み出した。 《続く》 ―――――― リドのノリは子供時代も大人時代も全く変わらぬカンジですが、蔵人は…… なんともいえぬ青臭さです(笑)。このまま普通に教会で育てば、まっすぐ極まるヒーローに成長したんだろうなぁ、とか思ったり・・・ 22:51:30 コメント(0) [コメントを書く] 重要なお知らせ@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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